院長ブログ(No.185 気にかけてくれることが)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長ブログ

No.185 気にかけてくれることが

2023年02月09日

当院には、いろいろな病気のかた、というか小さなクリニックの割には悪性疾患のかたが多く来られます。
ガイドラインに乗らないかたが多く、つまりは難治。今、通院されている方の中にも、再発を繰り返すかたがおられます。

当院は、良いのか悪いのかのんびりしており(=つまり患者さんが少ない・泣)、患者さんとお話ができる時間が多いのですが、先日、あるかたと話をしていたところ、「切ってもまたすぐ再発するし、主治医の先生も困ってるみたい」と。確かに、治療方法は有限であり、「これがだめならあれ」「あれがだめならそれ」といくらでも方法があるわけではありません。それは辛いことではあるけれど、それが現実であり、ドラマのような逆転ハッピーエンドにはなかなかなりません。

しかしそのかたは「患者さんってね、やっぱり長い間こうして通ってると、なんとなくわかるんよね。無理(=治らない)なんかなって。お医者さんって、病気を治すのが仕事やと思うし、そりゃあ治して欲しいって思うよ。でも治せなくても仕方ないよね。こうして先生のほうからそばに来て話を聞いてくれて、自分の為に何か方法はないかなって考えてくれてるのってわかるんよ。だから、なんて言うのかな、あかん(=あまり先が長くない)ことも少しずつ受け入れることができるっていうんかな。そんなに怖くないなってね」と。

勿論、我々は医師である以上、治したいと思うし、心からの笑顔に会いたいと思うけれど、現実はまだまだ多くの病気は治らないし、それ以前に診断がつかないこともたくさんあります。
医学は進んだと言っても微々たるもので、良い面だけをクローズアップしてニュースで取り上げられても、それは一部を拡大鏡で見ているだけのようなものです。

夢を持つことはとても大切だけれど、現実を知ることもとても大切。もちろん、全ての患者さんがこのかたのよう思ってくれるわけではないし、私自身が逆の立場になった場合、こんな言葉を医師に言えるか、と聞かれたら、言えないだろうなあって思うけど。ただ硬い心が、こうして少しでも柔らかくなってもらえたらとても嬉しい。

人を貶めたり、言葉尻をとって批難したり、中傷したり、となにかと殺伐としてきた今の時代に、とても辛いはずであろう患者さんから、こんな言葉を言われると、こちらの胸が詰まってきてしまいます。

医師は多分、病気を治せなかった患者さんからは足が遠のきます。一般的に言っても、得意先には笑顔で挨拶に行けるけれど、怒られたり、失態をしたりした取引先には足が向かない。とか、注意ばかりする監督さんより、褒めてくれる監督さんのほうが練習に参加しやすい、とかありますよね。だから、治せなかった場合、“申し訳ない” と言う気持ちで病室を訪れにくい、ということはあると思います。

患者さんにとっては、治してくれる医師が一番良い医師です。ブラックジャックみたいに難しい状況でも助けてくれたら、なんて良いだろうと思います。しかし、それが無理だった場合、次ぎに良い医師とは一緒に考えてくれる人、心配してくれる人なのだろうと思います。

いろんな場面で「難民」と言う言葉が安易に使われているのは、本当の難民の人々にとってとても失礼だと思うので嫌なのですが、つまり、「難」とは「誰も気にかけてくれないこと」なのだろうと思います。なんとかできないかと気にかけてくれる人がいるとき、結果的にはどうしようもできなかったとしても、こころは溶けていくのだろうと思います。

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