院長ブログ(No.159 未来予測)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長ブログ

No.159 未来予測

2022年06月17日

今月から、「線状降水帯」の発生予測がされるようになりました。積乱雲が発達して、大雨をもたらすおそれのある場合、気象庁が半日から6時間前までに発表してくれるそうです。線状降水帯は大きな被害をもたらしますから、数時間前に発表されればありがたいですよね。
そこで、気になるその的中率ですが、あたる確率は4回に1回程度。見逃してしまうことも3回に2回程度あるということです。

この値を聞いたとき、正直なところ「あんまり精度高くないんだなあ」と思いました。的中率が4回に1回だと、4回のうち3回は「線状降水帯が発生するだろう、と言われたけど発生しなかった」ということになり、緊張感が無くなってしまうように思いました。勿論、線状降水帯が発生しなくても、大雨になる可能性は高いわけで十分価値のある情報なのですが。

この降水帯の発生を予測する方法を私は知りませんが、専門家の方々が、気象衛星や色々な機器を駆使し、膨大に蓄積されたデータをもとに出して下さっていることでしょう。しかしそれでも、現段階での的中率はこれくらいなのです。理論をもとに出された予測であっても、理論のもとになる全ての現象を我々が知り得ているわけではありませんから。

地震予測もそうです。「今後30年間に震度6以上の地震が起こる確率が40%」と言われても、明日起こるのか、30年先に起こるのかはなんともわかりません。これは線状降水帯の発生予測、巨大地震の発生予測のレベルを批難しているわけでは決してなくて、「未来予測」というものはこれほど難しいものだということです。
地震も、今まで活断層があるとは言われていなかったところで巨大地震が起きることはあります。我々は、手持ちの知識、情報で予測するしかなく、それは医学でも同じです。

医療従事者も、患者さんから余命などを聞かれる事が少なくありませんが、わかりません。人の命を、人がわかるはずがありません。神様でも予言者でもありませんから、わかりません。がんの5年生存率などが発表されますが、あくまでも統計であり、個人の患者さんがどうなのかはわかりません。

ご本人、御家族としたら、「あとどれくらい一緒にいられるだろうか」「動けるうちに○○に旅行に連れて行ってあげたい」「会社の引き継ぎがあるからいつころまで仕事ができるだろうか」などと思われるでしょう。
余命をある程度知っておかれたほうが良いと思えるかたには、「あくまでも統計ですが」とお断りした上でお話します。会社の経営などをされているかたなら、「余命はわからないけれども、酸素を吸わずに飛行機に乗れるのはあとこれくらいではないでしょうか」などとお話をすることもあります。長年の経験から、流れをイメージしながらお話しします。

先週、7年前に初診で来られたかたから1年ぶりにお電話を頂きました。「あのとき(主病院で)余命3-4ヶ月と言われてもう7年です」と。つまり、統計とはこういうものです。

がんセンターが癌の5年生存率などを出しています。統計はとても大切です。しかし、統計は統計です。過去のデータの分析であって、個々人の未来予測とはまた違います。統計の価値、有用性をわかった上で、その使い方、解釈の仕方を自分なりに持っていることは大切だと思います。

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