院長ブログ(No.158 治療の希望は患者さんが、決定は医師が)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長ブログ

No.158 治療の希望は患者さんが、決定は医師が

2022年06月15日

当院に来られるがんの患者さんとは色々なお話をします。

「こういう治療を受けたい」「この治療は受けたくない」との思い、希望を示すのは患者さんご本人なり、家族なりですが、責任を負うのは医師になります。どういうことかというと、「したい」「したくない」と決めたことへの責任を患者さん側に負わせてはいけない、ということです。ある患者さんのがん治療をどうすれば良いかと考えるとき、本人が「こうしたい」、家族が「こうしてあげたい」と思っても、色々な事情からできない事もあります。その時に、できない事を「こうしたほうが良いですよ」とは言いません。何故なら、できなかったことへの自責の念をもって生きていくのは残された家族だからです。

病気は患者さんだけのものではなく、かかわる家族の問題でもあります。もう20年以上前のことですが、ある白血病の子どもさんのお母さんが「この子の命は、この子だけの命ではありません」と仰ったことを、強く覚えています。

がん治療にもガイドラインはありますが、その患者さんにとっての正解はガイドラインに沿ったものではないかも知れません。残された家族が「あのときに、こうしておけば良かった」「あの治療を勧めなければよかった」と自分を責めながら生きていくのは辛いことですから、そこは、医師が「こうしましょう」と方向性を決めることで、残された家族の重荷を少しでも減らすことができればと思います。

がん患者さんにかかわる医師は多くの患者さんを見送ることになると思いますので、その全てに納得できているか、と言われるとできていません。しかし、家族を含めてそのような思いをもって接していくことはとても大切だと思っています。

今の時代、“インフォームドコンセント”とよく言われます。しかし医療側が治療の話をしたからといって、治療方針を患者さん、家族さんに決めて貰い、その責任まで負ってもらうというのは、酷なことだと思います。何故なら、インフォームドコンセントですべてを伝えることは無理だからです。言葉で伝えることも無理ですし、仮に言葉で正確に伝えることができたとしても、それがその患者さんに当てはまるかどうかというとまた別の話になります。十分でない知識・経験のなかで、命にかかわる大事な選択の責任まで負ってもらうのは重過ぎると思います。

今治療している抗癌剤が効かなくなった時、新しい抗癌剤を試してみた方が良いのか、緩和ケアで苦痛を取り除く方が良いのか。誰にもわかりません。もしかしたら、新しい抗癌剤が著効するかも知れません。しかし、副作用が辛いだけで、効果が無いかも知れません。寿命が延びるかも知れませんが、逆に死期を早めるかもしれません。その最終決定を、本人や家族にしてもらうというのは厳しいでしょう。

家族や、患者さんが「6◎:4○で◎の治療方法かな」と思っているのなら、「私も◎ですかね」と後押しをします。その結果が良かったかどうかは、神様しかわからないでしょう。しかし、残された家族が納得して生きていくためにも「それでいい」というのは医師の責任だと思っています。
その時々に患者さん、家族が悩んで、考えて、決めたことは正しいと思っています。

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