院長コラム(No. 153 Pseudo progression (偽増悪))|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No. 153 Pseudo progression (偽増悪)

2022年04月13日

オプジーボやキイトルーダ等の免疫チェックポイント阻害剤ががんの治療に使われるようになり、使用適応癌種も増えました。私がこの世界に入った30年前には全くの夢だった薬が現実のものとなり、今現在、これらの薬で治療を受けられているかたもおられると思います。
使い始めると、当初予想されていなかったことがいろいろと起きてきます。例えば、pseudo-progression。日本語では「偽増悪」とか「擬似進行」とかと訳されていますが、文字通り “一見がんが増悪しているように見える” 現象 です。

どういうことかというと、がん免疫療法や放射線治療が実際には効いているのに、腫瘍マーカーがあがったり、画像上がんが大きくなったように見えることです。増悪しているのか、一時的に増悪しているように見えるだけなのか区別がつかないことも多く、医師も判断が難しくなります。
「偽増悪」だった場合は、やがてマーカーは下がり、がんは縮小します。ですから、がん免疫療法などの治療開始後、がんが大きくなったからといって「無効」とは言い切れないのです。

その上、免疫治療は即効性はないと以前から言われています。治療開始後3ヶ月くらいは、マーカーの減少やがんの縮小などの効果が見られないこともよく経験します。しかし、治療を開始したのにマーカーの値が増えたり、がんが大きくなったりすると、患者さんが不安になるのは当然です。免疫治療をしている医療従事者は「治療開始後数ヶ月は待つ」「効果の評価はそのあとから」と思って経過をみています。しかし、腫瘍の増大にそろそろブレーキがかかるのか、それともブレーキがかからないのか、は数ヶ月経ってみないとわからないので、我々も揺れる気持ちの中で経過を追っています。

「偽増悪」という現象は、免疫療法によって活性化されたリンパ球が腫瘍の回りに集まってきて攻撃をしているために原発巣が大きくなったように、まるで増悪したかのように見えると言われています。ただ、免疫療法が効いていなくて、本当に腫瘍が大きくなっている場合もありますし、免疫治療自体、本来即効性がないので、その判断はとても難しい。

また「増悪」なのか「偽増悪」なのかを見極めるタイミングも大切で、増悪しているのに、「偽増悪かも」と経過を見ていると積極的治療開始の時期や治療内容の変更時期を逃すことになります。今のところその時期としては、免疫治療開始後3カ月程度と考えられていますが、1年以上してから腫瘍の縮小、マーカーの減少をみたかたもおられるので、「何ヶ月」というはっきりとした数字を出すのは容易ではありません。

医療は、数字では表せません。個々人皆違うので、「○年間」「○月まで」「○回」「○mg」などと数字で述べることはなかなかできないのです。でも患者さんが「数字を知りたい」と思われるのは自然なことでしょう。「あと何回抗癌剤をするの?」「何年再発しなかったら、もう治ったって言えるの?」と。でもやはり人はそれぞれ違います。医師にもはっきりと言えないことはたくさんあります。「逃げる」わけでもなく、「隠す」わけでもないのですが、わからないこともたくさんあるのです。

ただ、今回お伝えしたいのは、“免疫治療開始してのち、マーカーが上昇したり画像上悪くなっているように見えたとしても、一概に治療が効いていないというわけではない” ということです。

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