院長コラム(No.147 「その人がいなければ」と考えて欲しい)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.147 「その人がいなければ」と考えて欲しい

2022年02月09日

去年末の大阪のクリニックの放火殺人事件、先月の訪問診療医射殺事件と、凄惨な事件が起きました。当たり前ですが、医師が永遠の命を保証できるわけでもなければ、全ての病気を治せるわけでもありません。しかし、多くの医療関係者は少しでも患者さんに良くなって欲しいと思って、看護、介護、リハビリ指導、検査、お薬説明などをしているわけです。ですから、医療関係者に対しても「ありがとう」という気持ちを持って頂けたらと思っています。

そして医療従事者でなくても、自分にできない事をしてくれる人にはやはり感謝の気持ちをもって貰えたら嬉しいです。警察官、消防士、介護職員、教師、漁師、農家、運送、建設・・いろいろな職業の人がいますが、“その人達がいなかったらどうなるのだろう”と考えると、そのありがたさがわかると思います。コロナ感染症の広がりでアメリカの衛生職員がごみ収集できなかったとき、町には悪臭が立ちこめ、ネズミ、ゴキブリの発生により不衛生な状況になったと言います。

今回、医師を狙った殺人事件が起きたため、訪問看護スタッフや医師へのアンケートが行われたそうですが、それによると、訪問看護師の半分が暴力を振るわれた経験があるといい、その多さに驚きました。

また医師へのアンケートでも
・処置をしようとしたら、患者に突き飛ばされ、頭を強く床に打ち付けて外傷性くも膜下出血になった。
・内視鏡検査をしようと「口を開けて下さい」といったところ「なんだ、このやろ、俺に命令する気か」と蹴られた。
・薬の減量を勧めていこうとすると、「薬を減らすなら家族をひどい目に遭わせてやる」と脅された。
・夜中の救急外来に来た患者が「数ヶ月前から身体がだるいから全身検査をしろ」というので、「救急外来は緊急性を要する人を診ている」といったところ「おまえは俺に説教する気か。俺は暴力団員じゃ、手下に締め上げさせるから帰り道は気をつけろ」と言われた。
・点滴がうまく入らなかったと腹を立てた患者がその針を奪い医師の顔を刺したため、医師は肝炎になった  等々
私が想像していた以上のことが起こっていました。

受付、看護師、医師、理学療法士、介護職員、薬剤師、検査技師などの人々はそこまで言われても黙って仕事をしないといけないのでしょうか。ついには命を奪われても尽くさないといけないのでしょうか。亡くなられた医師達は、熱心な医師だったと聞きます。「誰も引き受けないなら自分が引き受ける」「なんとか社会に復帰して貰いたい」と願った医師達が身勝手な考えから命を奪われるようなら、だれも医師なんかにはならないでしょう。

勿論、多くの患者さんはそんな事はないと思います。ただ、「訪問看護師の半分が暴力を受けた経験がある」となると、それでもなお「訪問看護をしよう」と思う看護師は減って当然でしょう。そうなったとき、困るのは誰か。
事故や暴力をうけて困っているとき、警察官がいなくて、だれも助けに来てくれなければどうなるのか。
自分の家が火事で燃えているときに、消防署員が駆けつけて放水してくれなければどうなるのか。
商品を注文したときに、配達してくれる人がいなければどうなるのか。

「その人がいなかったら自分の生活はどうなるのだろうか」と考えることって大切だと思います。

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