院長コラム(No.30 「私、失敗しないので」)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.30 「私、失敗しないので」

2019年07月03日

このセリフで有名な外科医のドラマを私は一度も見たことが無いのですが、この秋、この人気シリーズが復活するということで、楽しみにしておられるかたも多いでしょう。

しかし、この言葉、実際の医師なら決して言わないでしょう。多分多くの医師は、自分のしたこと、することを心配しながら、日々患者さんに接していると思います。「咳止め出したけど、ちゃんと咳は止まったかな」「お腹痛いって言ってたけど、虫垂炎で手術になってないかな」「糖尿病の薬出したけど低血糖になってないかな」と、自分のしたことを振り返りながら心配します。また、「ワクチンをつくるけど、細胞はたくさん取れるかな」「血管細い人だけど、一回で点滴が入るかな?」とこれからのことを心配します。

外科医が手術に向かうときも、ある程度の自信と、少しの心配が入りまじっているのでは無いでしょうか。私は内科医ですから、外科医が術後に「手術は成功した」というのかどうか知りません。しかし、例えば癌の手術の場合、もし「手術が成功した」と言ったとしたら、それは「手術中にアクシデント無く、想定以上の出血も無く、見える範囲の腫瘍は取った」ということだと思っています。ですから術後に縫合不全が起こるかもしれないし、再発するかもしれない。でも今できるだけのことは一生懸命行い、問題なくできた、ということではないでしょうか。

「手術が成功する=病気が治る」で無いといけないのであれば、手術をする医師はいなくなるでしょう。たとえそれが虫垂炎であっても100%はありませんから。それでも、外科医は手術をしますし、患者さんは手術を受けます。なぜか。それは、治る可能性を高めるためです。絶対じゃないかも知れないけど、治る確率を高めたいからです。人類はそうやって進歩してきたのです。麻酔薬も無く、鎮痛剤もない時代から、今のすばらしい時代に進歩してきました。

相手に完璧を求めるほど自分が完璧かと考えると、そんな完璧な人はいないでしょう。でも努力している姿は美しいし、自分が努力している人は、努力している人が完璧で無いからといって決して責めはしないと思います。

手術で見える範囲の腫瘍を切除してくれたとしても再発する可能性はあります。しかし、「手術をして治った人がいる」と肯定的にとらえ、より治癒率を高めるためにはどのようにすれば良いかを考えていくことが大切でしょう。今が完璧なら、今より良くなることは無いですから。

 

一覧に戻る