院長コラム(No.28 医師の責任)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.28 医師の責任

2019年06月19日

1996年、近藤誠医師の書いた「患者よ、がんと闘うな」という本がベストセラーになり多くの方の共感を得ました。その後も「がん放置療法のすすめ」「医師に殺されない47の心得」などを書き、いずれもベストセラーになっています。

もう10年ほど前になりますが、乳癌を強く疑われた女性が近藤先生の本を読まれ、それ以上の検査や治療は受けずに様子を見ていました。彼女は「今はがんもどきかもしれない。悪くなれば癌なのだから」と考えたそうです。しかし、その後、“全身の骨に転移が広がり癌だとわかった。癌もどきではなかった”ということで来院されました。

また、先日来院された男性は、昨年、早期の胃癌が見つかって手術を勧められたのですが、ある医師の“体温をあげると癌は治る”という本を読み、手術は受けずに毎日温熱機で胃の当たりを温めていたそうです。しかし最近になって食事をとっても吐くようになり、内視鏡検査を受けた結果、胃癌が大きくなり通過障害を起こしているということがわかりました。

私はこの医師の方々の本を拝読しておりませんので内容についてはコメントできませんが、医師の発言には重い責任があります。

あの乳癌の女性は様子を見ずに早期に治療を開始していれば治ったのではないだろうか。あの胃がんの男性は見つかった時点であれば内視鏡で癌を取り切れたのではないだろうか。もったいない、本当にもったいない。完治できるチャンスはあったであろうにと思います。

しかし、我々医療従事者も、これらの“がん治療を否定する本”が受け入れられる理由を考えなければならないでしょう。今なお、近藤誠医師の意見に賛同する患者さんは癌患者さんの1割ほどいるのではないかという数字もありました。

癌と診断をうけると、手術や抗癌剤の治療が始まります。いろいろな合併症や副作用に耐えながら治療を続ける。勿論、治る人もたくさんおられますが、辛い治療に耐えたのに再発した、効果がない、という方が少なからずおられるのも事実です。そうなると、「頑張ったけど治らない」「副作用で辛いばかりだ」という思いから、近藤医師の「癌は治療するな」という言葉に惹かれるのも良くわかります。

癌というのは治療すれば治るとは一概に言えません。勿論、治療すれば治るがんもあれば、治療しても治すのが大変厳しい癌もあるということを理解したうえで、どう選択するか。早期に対処しておけば高い確率で治ったであろう方がおられることを考えると、医療従事者の言葉は重いものだと思うのです。

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