院長コラム(No.118 がんと血栓症について)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.118 がんと血栓症について

2021年06月13日

がんは身体のいろいろなところにできます。胃癌、肺癌、乳癌、前立腺癌などから、「がん」と名前は付かないけれど、骨肉腫とか白血病などのがんもあります。しかし、「心臓癌」は聞きませんね。

消化器科、呼吸器科、産婦人科、脳外科、皮膚科、耳鼻科、とどんな科でも悪性腫瘍の発生はみられますので、がんの患者さんの診療にあたっていると各科との繋がりはあるのですが、今まで循環器科との接点はほぼ有りませんでした。しかしいろいろな抗腫瘍薬が生み出されるに従って寿命が長くなり、またその薬の作用機序から血栓症を起こす人が増えるにつれ、循環器医師との接点も増えてきました。

さて、がんの患者さんを診ていく上でまず主眼がおかれるのは、「腫瘍が小さくなったか」です。「3cmだった腫瘍径が1cmになった」「前回のCTで見られた腫瘍が見えなくなった」などと言うのがやはり治療効果の判定として大切になるので、まずはこちらに目が行きます。そして、腫瘍マーカーやCRP、LDHなども気にしてみています。
それに対して、「血栓形成傾向にあるか」とか「線溶系が亢進していないか」等は、なかなか見ないと思います。しかし、血栓塞栓症は外来通院しているがん患者さんの命にかかわる原因の上位に位置しており、近年、その数は増加していると言われています。癌の患者さんにおける静脈血栓塞栓症(VTE)を合併する確率は10-20%と非常に高く、非がん患者さんと比較すると7倍にものぼるといわれていますので注意が必要です。

それでは、なぜがんの患者さんに血栓塞栓症が多いのでしょうか。そこにはいくつかの原因があります。
まずは、癌細胞は血栓をつくりやすい因子、サイトカインなどを放出しているため血栓ができやすい素地があります。がん自身が、血管新生や転移において自分の有利になるような状況を作り出しているため、凝固機能が亢進しているような状況になっています。

また、プラチナ製剤と呼ばれる抗癌剤やタキサン系と呼ばれる抗癌剤、血管新生阻害剤と呼ばれる分子標的薬などもその作用機序から血栓症の合併に注意を要します。もちろん、“血栓を起こす可能性があるから使用しないように”というものではありません。抗癌剤の目的は癌細胞をやっつけることですから、これらの治療薬を用いる重要性に変わりはありません。しかし、どんな治療方法にもプラスとマイナスがあると言うことを知った上で、患者さんはできる範囲で予防を行い、医療者側は早期発見、早期治療につなげていく必要はあります。

がんという病気によって食欲が低下しているところに、手術や抗癌剤治療を受ければ、さらに食欲は低下するでしょうし、運動するように言われてもとてもじゃないけどそんな状況ではないこともあります。しかし、発熱、脱水、運動量低下、などは血栓のリスクをあげます。また治療に必要なカテーテルの挿入・留置も血栓症のリスクを増やします。

なかなか、すべてがうまくいく、という方法は無いものですね。腫瘍を小さくするために抗腫瘍薬を投与する、食べられないからカテーテルを挿入する、局所に抗癌剤を入れたいからカテーテルを留置する。血管確保が難しく、抗癌剤の血管漏出による壊死を防ぐためにポートを埋め込む。それぞれ意味があり、得られるものがあるから行う治療ですが、このような事がありうると言う知識を持っておくことは大切だと思います。

このように、今まではあまり交わりの無かった循環器内科医と腫瘍内科医が今、強い結びつきをもってがんの患者さんの治療にあたっています。あまり期待せず、でもちょっと期待して、待っていて下さい!

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