院長コラム(No.115 患者さんとの思い出)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.115 患者さんとの思い出

2021年05月22日

こういう仕事をしていると、多くの患者さんと巡り会います。
そして、本当にたくさんの思い出があります。

好きな釣りの雑誌を見せてくれながらお話したこと、「退院前に一緒に写真を撮ろう」と言われて写真を撮ったこと、クリスマスに外出希望をしたかたが「X’masプレゼント」と言って赤い毛糸のソックスをくれたこと、「お尻が痛いんだけど」と恥ずかしそうに見せてくれたこと。それこそ書き切れないほどの思い出がたくさん、たくさんあります。

今、5月になり、うちのベランダにはある患者さんから頂いた木がぐんぐんと新芽を伸ばしています。若葉は葉の色が違いますし、葉の艶が違います。軟らかくて、生き生きしていて、陽が射せばきらきらと輝いています。毎朝、毎晩見ている私には、日を追う毎に成長しているのがよくわかります。

この木をくださったかたは、がんの末期で、主病院では「もうつかえる抗癌剤がない」と言われて当院に来られていました。肺転移が一時はかなり小さくなったのですが、一年半ほどしてまた大きくなり始め、緩和ケア病院に入院されることになりました。

この木は緩和ケア病院に入院する前に、その患者さんが持ってきてくれた木なのです。そのかたは独り身で、高齢のご家族が施設に入所されているということでした。「自分の墓も作ってきました」「自分がいなくなったあとの部屋の処分も決めてきました」と、淡々と話をして下さっていたのですが、掘り起こされてしまう「庭の木が気になる」と。
私が花好きだと、診察の折に時々お話をしていたものですから、「先生、貰ってくれませんか」ということになり、当院の外来に来られるたびに、一本ずつ、三種類の木を分けて頂きました。もう今年で5年ほどになりますが、鉢のサイズが少しずつ大きくなっています。

その方は、独り身であったこともあり、緩和ケア病院に入院されてから一度病院に伺ったことがあります。ご自身でベッド上に起き上がることもできない状況でしたが、残されるご高齢のご家族のことを心配しておられました。

毎日、何人ものかたが亡くなります。病気だったり、事故だったり、争いだったり。コロナ感染症でも多くのかたが亡くなっています。その死者数は某内閣官房参与が仰るには、「他国に比べると“さざ波”ほど」なのかも知れません、しかし、一人一人に歴史があり、家族があり、一生懸命に生きた人生があります。

それぞれの人生の花が咲き誇っているときに巡り会えるのも良いですが、それぞれの人生の終末期にそっとそばにいさせてもらえることもありがたく思います。
今日の梅雨の晴れ間、ベランダの木々を見ながら、頂いたかたのことをゆっくりと思いだしていました。

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