院長コラム(No.109 「What makes a good life?」)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.109 「What makes a good life?」

2021年03月17日

一生を通し、私達を幸福で健康にするものは何でしょうか? 人生の幕を閉じるときに、「ああ、良い人生だった」と思わせるものは富や名声でしょうか。

ハーバード大学はこれに対する答えを探そうとしました。現在4代目となるこの研究のディレクターであるハーバード大学の精神科教授 ロバート・ウォールディンガーによると、ハーバード大学は1938年から75年間にわたって、“What makes a good life?” “私たちが幸福で健康に過ごすのに必要なものはなにか”という研究を行ったそうです。当時10歳代のアメリカの若者724人を集め、その人生をずっと追い続けたというのですから凄いものです。75年後約60人が存命でコンタクトが取れたそうで、中には大統領になった人もいたというのですから、“それは一体誰?”と興味もあったりして。

さて、このハーバード大学の長年の研究の結果、「人を健康で幸せにするのは、良い人間関係であり、財産でも社会的地位でもない」と結論づけられました。家族や友人とのつながりの多い人は、少ない人に比べて幸せを感じやすく、健康で長生き。一方、孤独を感じている人は、中年にさしかかる頃から健康問題を抱え、認知機能も低下しやすく、寿命も短かったそうです。

アメリカ・ブリガムヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルトランスタッドも148の研究、30万人以上を対象とした分析を行っていますが、やはり「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」という結果を発表しています。冠動脈疾患や脳卒中などの血管系の病気の発症に社会的つながりが関係しているかを調べた解析では、社会的つながりの少なさは、冠動脈疾患の発症を29%、脳卒中の発症を32%上昇させていたという報告もありました。
同様のデータは各国から出されており、これらから言えることは、孤独でいること、社会的繋がりが無いことは、心にも身体にも悪い影響を与えるということです。

今、感染症の広がりをなんとか抑えようと、世界各国で人との接触、交わりを減らすように言われています。「感染症」の点からみると、確かにこれは「正しい」のです。しかし、経済の面から、運動機能の面から、精神的安定の面から、認知能力の面からすると、何が本当に正しいのか、悩ましいところです。感染が治まった頃に、どのような世界が生まれているのかと思うとちょっと怖いですよね。

新型コロナウイルスの感染が広がり初めて1年。変異株の出現が各地で見られます。そして今後も、新たなウイルスの出現があるであろうことは容易に想像できます。今後も、「人と触れない」ことが基本となるような生活様式が求められるのかもしれませんが、これが本当に健康的な生活なのでしょうか。
まだコロナの感染が世界中に広がる前の2018年、イギリスでは孤独問題担当の大臣を設けたそうですが、日本でも先月同様の担当部署が新設されたといいます。

何をもってして「健康」なのか、どうであれば「幸せ」なのか、と言われると、肉体的健康に加えて、経済的安定、精神的安定、社会との繋がり、自分の存在意義なども伴っての「good life」であるわけです。
今日のコラムのタイトルの答えとして、ウォールディンガーは「The good life is built with good relationships.」と締めくくっています。

一覧に戻る