院長コラム(No.107 診療ガイドライン )|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.107 診療ガイドライン 

2021年03月03日

EBM普及推進事業(Minds)では、診療ガイドラインを次のように定義しています。
「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量し、最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで、患者と医療者の意思決定を支援する文書」。

医学は進歩していきますが、臨床現場は大変忙しいため、臨床医が最新情報を絶えず収集していくのは現実的に無理です。しかし新しい知見を得たいとは思っています。そのため、質の高い診療を普及させる為にガイドラインがあります。つまり診療ガイドラインは、科学的根拠に基づき、病気の検査・治療について最善の方法が書かれたもので、患者と医療者の双方を支援する為に作られています。しかし、ガイドラインに示されるのは統計的なものであるため、必ずしも個々の患者さんにとって一番良いとは限りません。

病気になると、いろんな手順に従って検査や治療が進められますが、その中心となるのは「ガイドライン」です。高血圧のガイドラインもあれば、胃潰瘍のガイドラインもあります。2001年に「胃癌」のガイドラインが作られ、その後もいろいろながんに関するガイドラインが作成され、改訂されています。

例えば「100人の胃癌の患者さんにAという抗癌剤を使ったら50人の人に効いた、Bという抗癌剤を使ったら20人に効いた、Cという抗癌剤なら5人に効いた。だから抗癌剤を使うなら、A→B→Cの順番で使いましょう」というもの。ですから、PさんにはMという治療方法がいいかもしれないし、QさんにはNという治療方法が良いかもしれないけれど、統計的には少数派なのでお勧めしません。この選択は至極当然で、一番多くの人に効果があるものを最初の治療として選びますよね。そして、メリットとデメリットを考えてデメリットの方が大きいと考えれば治療はもうしない、と言うことになります。

医療者側からすると、ガイドラインに沿って治療をするのは安心感があります。なぜなら最新の論文の統計に裏付けられた根拠に沿って行う治療ですから。ガイドライン通りにしてうまくいかなくてもある程度納得して頂けると思いますが、ガイドラインから外れたことをしてうまくいかないと「なぜガイドラインにそって治療をしなかったのか」となりますよね。

「このかたには、この治療はきついんじゃないかなあ」「量を減らした方が良いんじゃないかな」と思っても、統計的にはしたほうがいいとなると、やはり「ガイドラインに沿って」「する」ことになります。ただ、個人的には医師としての勘がそれほど悪いとは思いません。どんな世界でも未経験者には「勘」はありませんが、経験者には勘があります。「勘」というのは、当て推量ではありません。“勘は知識の上に成り立つ、直接的な認識”とも言われますから、その道に身を置いたものの勘は言葉にはできなくてもそれなりの根拠があると思っています。ただ、「ガイドライン」から逸れる勇気はなかなかないものです。

当院にはガイドラインから外れたかた、またはガイドラインに沿った治療を希望されない方が多く来られます。ガイドラインから逸れた時、または患者さんがガイドラインに沿った治療を望まない時、医療者は悩みます。医療の現場の忙しさを知っている立場からすると、じっくりと話し合って決めるというのはかなり難しい。けれど、ガイドラインに沿わない方の治療をどのように進めていくのがいいか、というのはとても大切なことだと思います。

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