院長コラム(No.105 診断について)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.105 診断について

2021年02月11日

もう60年ほど前、東大のある内科の教授が退官される際の講義で「私の誤診率は14.2%である」とお話されたといいます。医師の感覚で言うと、「ほお、さすが。東大のすばらしい先生は誤診率がそんなに低いのか!」と感心するのですが、一般的には「え、そんなに高いの!」と思われるのではないでしょうか。

2004年にある医学雑誌に載せられた論文には、フランスの医師らがICUで診療した患者さんの誤診率は31.7%とありますから、やはり先程の東大の教授の誤診率はかなり低いと思います。

ただ、上記「誤診率」は「臨床診断と剖検所見との不一致率」を見ていますので、一般的な「診断を間違った」というものとは違います。

例えば、胃のあたりが痛くて病院に行って診察を受けたとします。医師から「ウイルス性の胃腸炎でしょうかね」といわれ様子をみていたものの、数日経っても胃のあたりの痛みはすっきりせず再度受診。「それなら、一度胃カメラ検査をしましょうか」ということで胃の内視鏡検査をしたところ、「逆流性食道炎ですね」といわれ、胃薬を処方されたとします。しかし、やはりどうもすっきりしない、ということで1ヶ月後にCT検査をしたところ、悪性腫瘍が見つかった、ということもあると思います。

このように、1回、2回の診察で診断がつくのかと言われればつかないことはままあります。なぜ、”はじめに受診したときに診断がつかないのか?”と思われるかも知れませんが、「胃のあたりが痛い」といって初診で来られた方すべてに胃カメラ検査をするわけではありませんし、「頭が痛い」といって初診で来られたかたすべてに脳MRI検査をするわけではありません。医師が診察をして何か気になることがあるとか、「この痛がりかたは普通じゃないなあ」とか思わなければ、初診で画像検査をすることはないでしょう。

また逆に、”病気を見逃してはならない”と思って、すべての患者さんにCTやMRI検査をしたとしたら、「ちょっとしたことですぐ検査をする」と思いますよね。初診時にいきなり”まず検査をしましょう”なんて言われたら、「いやいや、ちょっと胃が痛いだけなんだから胃薬をくれたらそれでいいんだよ」ってね。

医学が進歩すると、守備範囲が広くなりすぎて一人の医師ではとてもフォローできません。正しい診断に早くたどり着くためにも、必要な検査を必要な人にするためにも、人工知能AIの膨大な知識にも助けて貰いながら診療ができる日が早くくればいいなと思います。

また、すべての病状に診断がつくわけでもありません。例えば30-40年ほど前には、AIDSとかC型肝炎なんてまだ認識されていなかったわけです。HIVウイルスの分離に成功したのは1983年、C型肝炎ウイルスの遺伝子断片が捉えられたのが1989年といいますから、それまでは、エイズという病気もなく、C型肝炎という病気もなかったことになります。まだまだわからない病気、認識されていない病気はたくさんありますが、世界中の研究者がその優れた頭脳と強い精神力で懸命に研究をしてくれ、我々はその恩恵にあずかっていることをありがたく思います。

 

一覧に戻る