院長コラム(No.103 病院名公表に疑問 )|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.103 病院名公表に疑問 

2021年01月20日

厚生労働省は先週15日、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを勧告できるように感染症法を改正する方針を固めたとか。そして従わない際には、病院名を公表することも検討しているらしいのですが、何のためでしょうか。怖がらせて強制力を持たせるつもりなのかな。しかしこんなことをすれば、逆に医療崩壊に拍車をかけると思います。

現在、日本には、精神科を除いた病院が8399施設あるらしい(厚生労働省HPより平成30年2月)のですが、このうち、国の施設が327、都道府県が199、市町村が629。つまり、国立・公立病院は全医療施設の14%も無いということになります。そして、そのほとんどが赤字経営だと言われ、その赤字分は税金から補われています。なぜなら、緊急性を重視したり、専門性を重視したり、医療体制が十分でない地域にも医療施設を設備したりする必要があるからです。
しかし、病院・医院の8割をしめる民間施設は、黒字にしないと成り立ちませんし、国公立病院と民間病院は担う役割が違うのです。赤字でも税金で補填してくれるけれど、それなりの専門性・必要性を担ってくれている国公立病院と、いろいろな要望に広く応えて診療している民間病院とは明らかに違うのであって、「民間病院のコロナ患者受け入れが悪い」とおしかりを受けるのは納得ができないのです。

例えば、心筋梗塞の患者さんを、民間の内科病院に送ってカテーテル治療ができるでしょうか。膵臓癌の患者さんを、一般外科の病院に送って手術をしてもらうのでしょうか。無理でしょう。やはりそれなりの施設設備、経験のある医師がいるところに送りますよね。それを受け入れなかったからといって「○○病院は心筋梗塞の患者さんを受け入れない、ひどい病院だ」と言うでしょうか。そしてなんとか受け入れたもののその患者さんを救えなかったら、「標準的医療レベルに達していない」と罰を受けるのでしょうか。

医師はそれなりの専門があります。政治のことはわかりませんが、ある日から「○○大臣」、次の内閣では「△△大臣」と横滑りできるようなものではありません。脳外科の医師に、来月から産婦人科の医師として仕事をしてください、といわれてもできません。整形外科の医師に3ヶ月の研修期間をあげるから、肝臓癌の手術をしてくれ、と言われてもできるはずがありません。それに、そんな医師に手術をしてもらいたくないですよね。

我々は一つの科、さらにはその中のある臓器・疾患に絞って研鑽を積んでいきます。10年でその科のことは一通りできるかも知れませんが、いつまでも勉強です。ですから他科の医師や看護師をコロナ対応に当たらせること自体無理がありますし、無理をさせることによってスタッフの感染のリスクを増やし、医療事故につながると思うのです。
また、ベッド数を増やしたからといって、受け入れることのできる患者数を増やせるわけではありません。医療の質は人です。人工呼吸器を上手に使いこなすのに、どれだけの経験がいることか。どれだけの人材が必要なのか。ましてや、ECMOなどどれだけの医療従事者が操作できるのでしょうか。

医療機関に同じ事を求めるのでは無く、それぞれの医療機関がそれぞれの役割を持って、できることをする。資金面、人材面から、したくてもできない事はあります。患者受け入れ要請に従わなければ病院名公表だと言う前に、少し考えて頂ければと思いました。

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