院長コラム(No.98 今一度 気を引きしめて)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.98 今一度 気を引きしめて

2020年12月01日

新型コロナウイルス感染者、重症者が日毎に増えています。今年のゴールデンウィーク、感染の広がりを抑えるために人の動きを止める政策として、政府は「stay home」を打ち出しました。しかし、7月末からは経済を動かすために「go to travel」という人の動きを促進する政策に切り替えました。ですから、感染が広がるのは当然の成り行きです。元々、「go to travel」は感染が終息に向かったら行う政府事業だったのです。しかし感染の終息になかなか見通しが立たないため、失速した経済を少しでも立て直す方向へと舵を切ったわけですから、この感染拡大は十分予測された展開、いわゆる想定範囲内だと思います。

今、大阪では病床数1000を越える大きな病院でも、人手が足りないため、一部病棟で受け入れが一旦停止されています。このままでは、感染症でない疾患で入院し治療を受けている患者さんが、適切な医療を受けられない事になります。そして、感染症の患者さんには、今後、トリアージが必要になるでしょう。一台の人工呼吸器を誰に使うか、一台のECMOを誰に使うか。その順番をつけなくてはいけない時期が来ます。まさに救える人を救えない、ということです。

若い人の新型コロナウイルスによる致死率はかなり低いことがわかってきたため、若い人に自粛を要請することは難しいかもしれません。しかし、高齢者に感染が広がった結果、重症者数が増え、病床数が逼迫しています。今後更に、疲弊した医療スタッフが体調を崩したり、感染や中傷を心配した家族が辞めるように促して離職したりしていく医療スタッフが増えていくことは容易に想像されます。今働いている医療スタッフがいつまでも働き続けてくれるわけではありません。

そうなれば、コロナに感染していない人が・・・それは事故だったり、心筋梗塞だったり、喘息の重積発作だったり・・・で命を落とす人が増えることになります。受け入れ先がないまま、死を迎えざるを得ない状況が迫ってきています。そしてそうなることが自分の子どもかもしれない、親かもしれない、恋人かも知れないということです。

でも、心のどこかに、「そうは言っても診てくれるだろう」と思っているのではないでしょうか。しかし、診れないものは診れません。現場の医師が再三再四言っているように、政府発表の「病床確保数」と、実際に「患者さんを受け入れることができる数」とは違います。

部屋があっても、機械が必要です。機械があってもそれを動かす医師が必要です。それを常に見守ってくれる看護師が必要です。臨床工学士の知識も必要です。しかし、彼らも人間ですから、肉体的にも疲れますし、精神的にも疲れます。もう、十分疲弊しています。休みの時には死んだように眠り、家族に感染させはしないかと日々気を遣いながら仕事をしています。こんな状況がもう10ヶ月です。そしてあとどれだけ続くかわかりません。

我々も人間ですから、長く強い緊張、精神的負担、いつまで続くかわからない不安に、判断が鈍ることもあるでしょう。良い医療を提供しようと思えば、医療スタッフが精神的にも肉体的にも充足されていなければいけません。医療スタッフは、自分たちが感染するリスクを承知の上で日々の診療をしています。感染対策をしていても、感染するときは感染します。過労に過労を重ねたうえで、どうすればいいのでしょうか。

ですから、重傷者数を少しでも抑えられるように、そして、結果的に他の病気や事故で命を落とす人が増えないように、今一度一人一人が気を引き締めてこの時期を乗り切りたいと願います。

 

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