院長コラム(No.94 医療従事者なのになぜ感染するのか?)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.94 医療従事者なのになぜ感染するのか?

2020年10月21日

新型コロナウイルスに感染すると誹謗中傷されるケースがみられるといいます。そのため、それに対して条例制定を検討している自治体があるとか。こんなことに規則を作らないといけないのかと残念に思いますが、これが現実のようです。これはヘイトスピーチでも同じで、ヘイトスピーチを禁止する条例をいくら作っても、根本的に考え方が変わらなければ真の意味での解決にはならないですよね。

さて、新型コロナウイルスに感染した患者さんを多くの医療従事者が治療に当たります。検査技師、看護師、医師と多くの人々がかかわります。そして最初は受付さんが応対しますね。
そんな中、院内感染、施設内感染ということばがニュースで聞かれ、「なぜ医療の専門家が感染するのか?」「少し慣れてきて気が緩んでいるのではないか」「ちゃんと感染対策をしているのか」という発言が「コメンテーター」なり「司会者」の口から聞かれることがあります。その発言を聞いてとても残念に思います。

マスクをし防護服を着ていても、ウイルスが飛び交っている場所に飛び込んでいくわけです。感染しなければ幸いだけれど、感染したことを「おかしい」と言われ、「プロなのになんたることか」という叱責めいた言葉を投げられると辛いです。

全く別の症状で受診した人が感染しているやもしれず、「常に受け入れに万全を期す」のは、人材、物資、財力すべてが潤沢に整っていないと「無理」です。産気づいた妊婦さんが感染しているかも知れない、転んで骨折したおじいさんが感染しているかもしれない、喘息の発作できた若者が感染しているかも知れない。不整脈で心肺停止になった人が感染しているかも知れない。はたまた、患者さんの家族が元気だけど感染しているかもしれません。「医は仁術」と教えられてきましたが、気持ちだけではどうしようもないこともあります。

日本は感染を減らす対策を積極的にしていないにもかかわらず、今のところ感染者が急増しないのが不思議ですが、止むことのない感染者に病院関係者は心身ともに疲弊しています。

「Go to travel」「go to eat」、更に「go to 商店街」と経済を動かすための政府の方針により、少しずつ賑わいを見せはじめたところもあり、このこと自体は経済的に苦しい状況におかれたかたたちにとっては朗報だと思います。しかし、その一方で、「go to travel」も行けず、「go to eat」にも行けない医療関係者もたくさんいます。その方たちに暖かいまなざしを投げかけてこそすれ、感染したことを批難するのは理不尽だと思いませんか。そのようなかたはご自分が新型コロナウイルスに感染したかもしれないときにどうするのでしょうか。ただ、一方でねぎらいの言葉をかけてくれるかたもたくさんおられますので、その言葉に救われます。

漁師が海で遭難した、工事現場の人が機械で怪我をした、騎手が落馬して骨折した、いろんなことがあります。しかし、それは「プロなのになぜ」と言われるものでは無く、リスクを背負って、そこに飛び込んで仕事をしている結果なのです。そこに思いを傾けてくれると嬉しいな、と思います。

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