院長コラム(No.86 信頼関係)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.86 信頼関係

2020年08月26日

昔、小児科の先生に言われました。「治療をするに当たって、親御さんに心配をかけるようなこと(=合併症や副作用)は言わなくて良い」と。

多分、今の世代の人からは、”それじゃあインフォームド・コンセントでは無いのではないか” と思われるでしょう。しかし、その先生は、「可能性の低いリスクを述べて、親に心配をかけてはいけない」と言いました。もう30年近く前の事ですが、はっきりと覚えています。

しかし、時代はうつり、可能性のあることはすべて話す、1%にも満たない事でも話す、という風潮になりました。「麻酔薬でショックを起こすかも知れません」「手術中に死亡する可能性もあります」。なぜ、このようになってしまったのかと思います。

そこにはお互いの信頼関係が薄らいだことがあるのでは無いでしょうか。車を買うときにも、保険に入るときにも、細かい字で書かれた分厚い説明書を貰います。私はきちんと読んだことはありませんし、なかなか全部読む人は少ないのではないかと思いますが、何かあったときに「ここに書いてある」と言うことなのでしょうか。

ご存じのように、医療も完璧では無く、まだまだわからないことがたくさんあります。「医学が進んでいる」と言うことは、つまりは「今は、途上」と言うことです。原因がわからなかったことがわかるようになったり、正しいと思われていたことが間違いだったり、無関係だと思われていた二つの事が深い繋がりがあったりするわけです。

最初に書いた小児科医師のように、「親に心配をかけるような事は、可能性が低いのであれば言わなくても良い」というような関係が築けたらいいな、と思います。勿論、「熱が3日ほど続くかも知れません」とか「咳が治まるまで一週間ほどかかると思います」などと言う比較的よく見られることで、心構えとして理解しておいて欲しいことはお伝えしておく必要があります。しかし、危険性が高い治療であれば医療としては認められませんから、危険なことは起こる可能性は低く、そこまで言わなくても良いと思うこともあります。

親御さんはこどもさんの主治医には評価が厳しいと思いますから、ときにお母さんから、「先生が主治医でいてくれてよかった」などというお言葉を頂くと、少しでも信頼関係が築けていたのではないかと、その言葉をありがたく刻んでいます。

何でもかんでも書類の山になる現代。いつか「あなたにすべてお任せします」という一枚で、済む日が来るでしょうか。

 

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