院長コラム(No.81 認知症について)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)がん治療 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.81 認知症について

2020年07月22日

「ボクはやっと認知症のことがわかった」という本を読みました。「長谷川式簡易知能評価スケール」を作った長谷川和夫先生の言葉が書かれた本です。

このスケールをご存じのかたも多いと思いますが、認知症の診断の際に使われる簡易検査です。「今日は何日ですか」「100から7を順番に引いて下さい」などという、認知症ではない人からすると「バカにしているのか」と怒られそうな質問が9つ(改訂版)あります。このスケールを作られた精神科医の長谷川先生ご自身が認知症になって始めてわかったこと、改めて感じた事を書かれたものです。

有吉佐和子さんの「恍惚の人」という痴呆を扱った小説が1972年出版され、この年のベストセラーになり、映画化もされました。当時は「認知症」という言葉も無かった時代で、2004年に「認知症」ということばに移行するまで、「呆け」「痴呆」と言われていました。そして「痴呆になったら、なにもわからない」「違う世界に住む人」「話をしてもわからないから、痴呆老人はのけて話をすすめよう」などというのが普通だったように思います。しかし、認知症は固定した症状を示すものでは無く、日によっても、一日のうちでも変動があるそうです。

1947年の日本人の平均寿命は50歳前半。1970年で70歳前半。しかし今や平均寿命は優に80歳を超え、2025年には、男性の平均寿命が82歳、女性が88歳と予想され、推計上、実に700万人が認知症と診断される、と。ただ、勿論、「認知症」と診断された日を境に、人格や記憶力、判断力が変わるわけではありませんので、少しずつ以前できていた生活ができなくなり、人の助けが必要になると言うことです。

ある町で行われた認知症の研究において、85~89歳の認知症の有病率は44.3%とありますから、平均寿命を生きれば認知症になるのは、ある意味普通の流れなのでしょう。

本書の中には、”認知症になったとて、人格が崩壊するわけではないのだから、一緒に考え、それぞれの得意なこと、興味のある役割を果たして頂き、せかせず、相手の気持ちを待つ。そして、騙さないことが大切だ”と書かれています。

しかし、これは認知症の方だけへの対応というのでは無いでしょう。これは普段我々が生活する上で軋轢無く、お互いが気持ちよく生きていくうえで大切な礼儀だと思うのです。つまり、人として大切なことなのです。

これからの高齢者時代、認知症の人の割合も確実に増えます。まわりの人がいらだつこともあると思います。しかし、我々を育ててくれた人たちです。我々よりもたくさん、苦しいことを乗り越えてきた方々です。どんな人にも輝かしい若かりし時代があり、そしてどんな人にも老いはやってきます。

いつもにこにことお話を聞く、相手の発言を待つ、行動を待つ、何度でも聞かれたら答える、というのは、現実的にはなかなか難しいでしょう。しかし「感謝」と「敬意」の気持ちをもって接したいと思いました。

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