院長コラム(No.73 がんの経過観察期間)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)がん治療 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.73 がんの経過観察期間

2020年06月03日

胃にがんができれば胃がん、乳腺にがんができれば乳がん、といいます。つまりどこにがんができたかという「場所」によって名前が付いています。しかし、それらの病気の性格はいろいろで、「肺癌」「乳癌」「卵巣癌」といっても、その性格・顔つきはいろいろです。おとなしいタイプのものもあれば、やんちゃなタイプもいます。そこで、今までのように発症した場所で決める縦割りの診断・治療ではなく、病気の性格が似ているかどうかで治療方針を決めることもあります。

たとえば、細胞の増殖に関与しているとされるタンパク質でHER2と呼ばれる目印があります。乳癌にこの目印が過剰に発現していれば、この目印をブロックするお薬が治療薬として用いられます。また、胃癌でもHER2という目印が発現していればこの薬をつかいます。つまり、縦割りの病気分類から横のつながりでの病気分類になり、それに伴い治療方法も変わってきました。「どこにできた癌か」という分類ではなく、「どんな目印が出ている癌か」「どんな性格の癌か」という分類です。

さて、そんな中で、患者さんから「胃癌などは5年再発しなければ治ったと言われるけど、私の場合、乳癌で10年経過をみる必要があるといわれたが、どうしてですか」と聞かれることがあります。確かに、胃癌や大腸癌などは5年再発しないと、”もう大丈夫だろう”ということで外来通院も終了になることが多いと思います。しかし、乳癌は10年経ってもまだ外来通院が続くことも珍しくありません。

2016年に全国がんセンター協議会が発表した集計結果では、
胃癌の5年生存率は70.9%、10年生存率は69.0%
大腸癌の5年生存率は72.1%、10年生存率は69.8% と5年と10年で生存率はあまりかわりありませんが、
乳癌の5年生存率は88.7%、10年生存率は80.4%、肺癌のそれは39.5%と33.2%であり、肝臓癌では32.2%と15.3%となっています。

これらのデータから、5年後と10年後の生存率に大きな差が無ければ5年で経過観察期間は終了となり、5年後と10年後の生存率に差があれば10年の経過観察ということになります。ただ、これらのデータは1999年~2002年の集計であり、当時と比べると今ではかなり治療方法が進歩してきていますので、当然結果も改善されてることを含めてこの数値を見て下さいね。
当時なかった「分子標的薬」は多くの患者さんが知る言葉となり、「免疫チェックポイント阻害剤」も見いだされ、その恩恵を受けることができるようになりました。医学も日進月歩です。

そして、なぜ、乳がんは長期間目が離せないかと言うと、乳がん細胞が骨髄中で長期間の休眠に入るためではないか、というモデルが提唱されています。また、予後が良くない印象のある膵癌ですが、高頻度に見られる変異遺伝子は4種類のため、監視しやすいのではないかとも言われています。
このように、それぞれの病気の特徴が解明され、それぞれの特徴にあった対処の仕方が少しづつではありますが見えてきました。相手がわかれば対処の仕方もあります。ですから、今までの病気分類、それによる経過観察期間というものも、すこしずつ変わっていくだろうと思っています。

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