院長コラム(No.68 動物実験について)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.68 動物実験について

2020年04月29日

1959年、英国のRussellとBurchの両科学者が動物実験の倫理的規範として、「3Rの原則」を提唱しました。3Rとは「Reduction」「Refinement」「Replacement」のそれぞれの頭文字の「R」を意味し、「実験に用いる動物の数を減らすこと」「実験動物の苦痛を避けること」「微生物や細胞、植物など、知覚機能の乏しい無脊椎動物に置き換えること」が、その趣旨です。

新しい薬剤を作ろうとすると、その過程で必ず動物実験が必要になります。なぜなら、新薬の候補ができた際には、まず動物でその副作用や有効性を見て、その次に少数の健常人で、その後患者さんで、と投与を受ける人の範囲を広げた上で世に出すからです。

1964に制定されたヘルシンキ宣言では、「ヒトを対象とする医学研究は、科学的十分な知識、適切な実験ならびに必要に応じた動物実験に基づき、一般に認知された科学的諸原則に従わなければならない(一部略)」と述べられており、動物実験の必要がなくなる可能性は少なくとも近い将来は期待できないでしょう。

動物実験に反対する人の気持ちは良くわかります。何も知らない動物たちが、病気にさせられ、薬を投与され、時に解剖され、”なんてひどいことをするんだ” と思う気持ちは良くわかります。
しかし、生まれてから死ぬまで薬を一度も飲んだことがないという人がこの世界にどれだけいるでしょうか。保存料、香料、着色料、農薬などもすべて動物実験の結果、有効性や安全性を確かめられてから世に出ているのです。果たして、これらを使ったものを食べたことが無い、使用したことが無いという人がどれだけいるでしょうか。

動物愛護から肉は食べないという人はいるでしょうが、そのようなかたたちも熱が出ればお薬を飲むでしょうし、怪我をすればお薬も塗るでしょう。勿論、不要な殺生は決してしてはいけません。しかし、やはり我々が少しでも安全に薬剤を使用するには、動物の命を頂くことになります。自分の家族にいきなり副作用も有効性もわからない薬を投与しますかといわれれば、当然拒否するのではないでしょうか。

我々人間は、多くの動物の犠牲の元に、病気を治させてもらっています。彼らの命をもらって薬を開発し、できるだけ安全に使用しようとしています。医学部では、「実験動物慰霊祭」と言うものがあり、実験で犠牲になった動物たちを供養します。我々は、自分の手で動物の命を奪っていることを知っています。動物の命を、申し訳ないと思いながらも、しかし有り難く頂いているのです。

動物を殺さずにいろんなものが安全に開発されるのではあれば、これほど良いことはありません。しかし、動物実験で安全性を確認されたものを我々は毎日使っているにもかかわらず、「動物実験」という言葉の響きから「むごい、残酷だ」というのは正しくないと思います。

我々は今、新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬を待ちわびています。これらの開発が各国で精力的に進められていますが、やはりここにも多くの動物たちの犠牲があります。それを忘れず、命をささげてくれる動物たちに感謝したいと思います。

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