院長コラム(No.67 「たらい回し」という言い方)|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)緑地公園駅 内科 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.67 「たらい回し」という言い方

2020年04月22日

私はこの言葉は、耳を塞ぎたくなるほど嫌いです。残念ながら、このところ良く聞くようになりましたが。

辞書を引いてみると、「たらい回し」とは、「物事を次から次へと送りまわすこと、面倒な案件や関わりたくない案件を部署間で押し付け合う責任逃れや責任転嫁」とあります。そして、だれもが良い印象を持っていない言葉だと思います。

さて、医療における「たらい回し」という言い方は報道媒体から派生したらしく、病院の「受け入れ不能」「受け入れ困難」の言い換えとして用いられているようです。 しかし、この「言い換え」は大変無責任極まりない「すり替え」であり、「言い換え」では到底すまされません。
つまり、病院の状況が受け入れ困難であると告げたことを、「面倒な案件」や「関わりたくない案件」とし、「責任逃れ」や「責任転嫁」として、まるで病院側が “受け入れ可能なのに患者を受け入れない” という印象をもたらす大変誤った言葉です。
「不可能」と「拒否」の違いすらわからない、つまり、「できない」と「しない」の違いすらわからない、大変お粗末な言葉のすり替えだと思います。マスコミにはこのようなことが少なからずあると思いますが、もし、このすり替えが故意でなければ、不勉強でしょう。

当直医は入院している病棟の患者さんも診ますから、病棟から、心肺停止だと呼ばれることもあれば、患者さんが自己抜管(人工呼吸器の管を抜いてしまうこと)したとコールがあることもあります。病棟から吐血だ、痙攣だ、血圧が下がった、と呼ばれるわけです。通院がむずかしい重症の方が入院しているわけですからこのような状況は十分にあり得る事です。
救急外来用に医師が当直しているわけではありません。一人の医師が病棟も外来も診ているのです。
ですから、「なぜ受け入れることができなかったのか」を考えずに、「受け入れなかった」という、その部分だけを切り取って非難するのは止めて欲しいと思うのです。

病院での受け入れが断られると、「なんで断るの?」「とにかく診て欲しい」と思うでしょう。しかし常に、すべての科の専門医が外来用に待機しているわけではありません。もし受け入れた後に、
「専門で無いのなら、なぜ受け入れたのか?」と思わないですか。
「前の患者さんがいて直ぐに診られず、結局2時間も待たせるなら、どうして受け入れたのか?」と思わないですか。
「空きベッドがないなら、なぜ受け入れたの? また救急車で他の病院を探さないといけないじゃない!」と思わないですか。

体調不良であれば、「とにかく医師に診て欲しい」という気持ちは良くわかります。ですが、受け入れることができるのに断っているわけでありません。「できないから、できない」のに、「たらい回し」といわれ、「責任逃れ」ともし思われているとしたら、我々としては大変つらいことなのです。そこをご理解頂ければ、うれしく思います。

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